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東京地方裁判所 平成2年(行ウ)135号 判決 1992年10月15日

原告

税金を監視する会

右代表者代表世話人

石田千秋

右訴訟代理人弁護士

三宅弘

近藤卓史

井上暁

古田典子

中島信一郎

被告

東京都知事

鈴木俊一

右指定代理人

金岡昭

外三名

主文

一  被告の原告に対する平成二年七月二六日付の公文書非開示決定のうち、以下の部分についてこれを非開示とした部分を取り消す。

1  現金出納簿について

(一)  別表一の「条例9条該当号」の「8号」の欄に記載のあるもの(昭和六三年度において合計四三件、平成元年度において合計八七件、平成二年度において合計一五件)

(二)  別表一の「条例9条該当号」の「2号及び8号」の欄に記載のあるもの(昭和六三年度において合計三〇八件、平成元年度において合計三三五件、平成二年度において合計七〇五件)から、別紙一の記載項目中「摘要」欄中の個人名、役職名又は肩書の各記載を除いた部分

2  「交際費の支出について」と題する書面(一般用)について

(一)  別表二の「支出内容」欄の「弔慰」を除くその余の欄に記載の支出内容の文書のうち、「条例9条該当号」の「8号」の欄に記載のあるもの(昭和六三年度において合計九五件、平成元年度において合計九二件、平成二年度において合計一五件)

(二)  別表二の「支出内容」欄の「弔慰」を除くその余の欄に記載の支出内容の文書のうち、「条例9条該当号」の「2号及び8号」の欄に記載のあるもの(昭和六三年度において合計六四六件、平成元年度において合計三九三件、平成二年度において合計七七件)から、別紙二の記載項目中「使途」欄中の個人名、役職名又は肩書の各記載を除いた部分

3  「交際費の支出について」と題する書面(供花・香典用)について

(一)  別表二の「支出内容」欄のうち「弔慰」の欄に記載の支出内容の文書のうち、「条例9条該当号」の「8号」の欄に記載のあるもの(昭和六三年度において三件、平成元年度において四件)

(二)  別表二の「支出内容」欄のうち「弔慰」の欄に記載の支出内容の文書のうち、「条例9条該当号」の「2号及び8号」の欄に記載のあるもの(昭和六三年度において二八一件、平成元年度において一五二件、平成二年度において四六件)から、別紙三の記載項目中「物故者」欄の記載及び「葬儀、法要執行の日時場所」欄中場所の記載を除いた部分

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告が平成二年七月二六日付で原告に対してした公文書非開示決定を取り消す。

第二事案の概要

一本件は、法人格のない団体が東京都の公文書の開示等に関する条例に基づき、東京都知事の交際費に関する支出命令書、現金出納簿及び「交際費の支出について」と題する書面の開示を請求したのに対し、被告が支出命令書は開示したが、現金出納簿及び「交際費の支出について」と題する書面については非開示とする旨決定したため、その取消しを求めた事案である。

二東京都における情報公開に関する条例の内容

東京都においては、昭和五九年東京都条例第一〇九号「東京都公文書の開示等に関する条例」(以下「本件条例」という。)が制定されており、その内容は、本件に関係のある限りにおいて、以下のとおりである。

1  目的

公文書の開示を請求する都民の権利を明らかにするとともに、情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定め、もって都民と都政との信頼関係を強化し、地方自治の本旨に即した都政を推進することを目的とするとされている(一条)。

2  解釈及び運用

本件条例の解釈及び運用に当たっては、公文書の開示を請求する都民の権利を十分に尊重するものとするが、この場合において、実施機関(本件においては被告)は、個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならないと規定されている(三条)。

3  開示請求権者

都の区域内に事務所又は事業者を有する個人及び法人その他の団体は、実施機関に対して公文書の開示を請求することができるとされ、右の「その他の団体」の意義については、自治会、商店会、消費者団体等であって、法人格はないが、団体の規約及び代表者が定められているものをいうと規定している(五条二号)。

4  非開示条項

個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人が識別され得るものについては、開示しないことができる。但し、法令等に定めるところにより、何人でも閲覧することのできる情報等を除くと規定されている(九条二号)。本件では右但書該当の有無は問題となっていない。

また、監査、検査、取締り、徴税等の計画及び実施要領、渉外、争訟、交渉の方針、契約の予定価格、試験の問題及び採点基準、職員の身分取扱い、学術研究計画及び未発表の学術研究成果、用地買収計画その他実施機関が行う事務事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務事業の目的が損なわれるおそれがあるもの、特定のものに不当な利益若しくは不利益が生じるおそれがあるもの、大学の教育若しくは研究の自由が損なわれるおそれがあるもの、関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの、当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生じるおそれがあるもの又は都の行政の公正若しくは円滑な運営に著しい支障が生ずることが明らかなものについても開示しないことができるとされている(九条八号)。

5  一部開示

開示の請求に係る公文書のうち、非開示条項に該当することにより開示しないことができる情報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において、開示しないことができる情報に係る部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ、かつ、当該分離により開示の請求の趣旨が損なわれることがないと認めるときは、開示しないことができる情報に係る部分を除いて公文書の開示をするものと規定されている(一〇条)。

6  実施機関は、公文書開示の請求書を受理したときは、受理した日の翌日から起算して一四日以内に、開示する旨又は開示しない旨の決定をしなければならず(七条一号)、右決定について、行政不服審査法の規定に基づく不服申立てがあった場合は、当該不服にかかる処分庁又は審査庁は、当該不服申立てについての決定又は裁決を行う(一二条)。

三争いのない事実等(証拠により認定したものはその項の見出しに証拠を掲記した。その余は争いがない。)

1  原告は被告に対し、平成二年七月一三日、本件条例五条二号に基づき、昭和六三年四月から平成二年六月までの東京都知事の交際費に関する支出命令書、現金出納簿及び「交際費の支出について」と題する書面の開示を請求した。

2  被告は、平成二年七月二六日、支出命令書については開示したが、現金出納簿及び「交際費の支出について」と題する書面(以下「本件公文書」という。)については、「個々の渉外内容を明示し、又は類推できる文書であり、特定の個人を識別しうるものであること並びに開示することにより関係当事者間の信頼関係が損なわれるものであること及び行政の公正又は円滑な運営に著しい支障が生ずるものであること」を理由とし、本件条例九条二号及び八号に該当するものとして、非開示決定を行った。

3  知事の交際費(<書証番号略>、証人五幣富士雄)

(一) 知事の交際費は、知事が都の代表者として、その職務に関し広範囲かつ多数の関係者と多岐にわたる交際をもって、都の行政の適正かつ円滑な運営を期するために支出されるものであり、知事が公の交際事務を行うにあたり必要な経費として、一般会計予算に計上されている。

(二) 知事の交際費の支出項目は、慶祝、弔慰、餞別、見舞、会費、謝礼、接遇、雑に分類されており、具体的な使途は以下のとおりである。

(1) 「慶祝」は、結婚祝、誕生祝、褒章・叙勲祝、当選祝、定期大会、周年行事、優勝等の祝事への祝金、祝品等である。

(2) 「弔慰」は、通夜、葬儀、告別式、法事、偲ぶ会、慰霊祭への香典、香華料ないし供花、法事花等である。

(3) 「餞別」は、退任、転勤する者への餞別金ないし記念品等である。

(4) 「見舞」は、病気、事故等への見舞いの品物等である。

(5) 「会費」は、送別会、就任祝賀会、レセプション等の会費等である。

(6) 「謝礼」は、中元、歳暮の物品等である。

(7) 「接遇」は、折衝、懇談等への料理、弁当等である。

(8) 「雑」は、上記いずれの分類にも属さないもので、出張の際の手土産、記念品、差し入れ等である。

(三) 知事の交際費の経理方法は、経費の性質上、即時現金支払いの必要性があるため、資金前渡しの方法(地方自治法二三二条の五第二項、同法施行令一六一条一項一四号、東京都会計事務規則七六条二二号)がとられている。そして、毎月の執行方法として、知事室副室長が毎月の所要額を月初めにまとめて資金前渡しを受け、交際事項発生ごとに個別決定して執行しており、清算は、東京都会計事務規則に基づき毎月末に行っている。

4  本件公文書の内容(<書証番号略>、証人五幣富士雄)

(一) 現金出納簿

東京都会計事務規則一〇二条の規定により資金の前渡しを受けた者が現金の出納を整理するために備えてある帳簿であり、各月順にバインダー式簿冊に綴り込まれている。具体的な記載方法としては、まず、前渡金収入については、年月日欄に当該収入の月日が、摘要欄には前述の支出項目(慶祝、弔慰、餞別、見舞、会費、謝礼、接遇、雑)及び相手方の氏名、役職名、肩書又は法人・団体名が、払高欄には当該支出の金額が、残高欄にはこれを差し引いた残高がそれぞれ記載されている。なお、内容が記載される前の書式は別紙一のとおりである。

(二) 「交際費の支出について」と題する書面

知事の交際費の支出について、支出内容、支出月日、支出の相手方の氏名、職名等が記載されており、一件毎に領収書又は支払証明書を添付し、毎月、知事に報告する文書である。これには、一般用と供花・香典用の二通りのものがあり、前記支出項目のうち「弔慰」に関するものが供花・香典用であり、その他に関するものが一般用である。

(1) 一般用

記載項目は、経費支出区分、購入物品の品目銘柄、単価及び数量、購入月日、購入先、取扱者氏名、使途、支払月日、支払金額、知事・副知事の分担額、備考、分類であり、「使途」欄には、支出項目、交際の相手方の個人名、役職名、肩書又は法人・団体名が記載されている。なお、内容が記載される前の書式は別紙二のとおりである。

(2) 供花・香典用

経費支出区分、物故者の肩書又は供進を必要とする事由、氏名、住所、死亡日時等、葬儀・法要執行の日時・場所、供花・香典の方法、購入先、発注月日、弔問者、支払月日、支払金額、知事・副知事の分担額、備考である。なお、内容が記載される前の書式は別紙三のとおりである。

5  本件公文書の年度別、支出内容別、非開示の根拠とした本件条例九条各号別内訳(証人五幣富士雄、弁論の全趣旨)

別表一、二記載のとおりである。このうち、「条例9条該当号」の「2号及び8号」の欄に記載したものは、条例九条八号に該当するほか、当該文書の記載自体から、被告の交際の相手方としての特定の個人が識別され、当該個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報は、この中には含まれていない。)が明らかになる文書である(なお、この中には、相手方の地位や、役職名のみが記載されたものもあるが、これは、その地位や、役職名によって、容易に個人が特定できるものであるので、特定の個人が識別されるものとして分類した。また、個人自体への支出ではないが、個人の名前を冠する会合等への支出も、その個人に対する支出として分類した。)。

四争点及びこれに関する当事者の主張

1  原告は民事訴訟法四六条にいう法人に非ざる社団にして代表者の定めのあるものといえるか

(原告の主張)

原告は、昭和五八年八月に設立された団体であって、毎年一回定時総会を開催し、そこで前年度の会計報告、役員の選任及び活動方針の決定等を行っている。役員の任期は二年であり、役員は改選されている。総会においては、多数決の原則が行われているが、結果的には満場一致で議事が決定されている。組織の代表者は、代表世話人である。なお、本件条例においても、五条二号に前記の規定があり、被告も、現に、原告の本件公文書開示請求を受理している。

(被告の主張)

原告は、組織化された団体ではなく、団体構成員の資格の得喪、財産管理の方法、総会の招集と議決、会員の表決権等について明確な規定を有していないので、原告は民事訴訟法四六条にいう法人に非ざる社団に該当しないというべきである。

2  本件公文書が本件条例の非開示条項に該当するか。

(原告の主張)

(一) 情報開示請求権の意義及び非開示条項の解釈について

本件条例は、都民の「公文書の開示を請求する権利を明らかにする」とともに、合わせて「情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定め、もって都民と都政との信頼関係を強化し、地方自治の本旨に即した都政を推進することを目的と」したものである(本件条例一条)。そして、「都民の公文書の開示を求める権利」は、憲法上の権利として確立し、また国際人権規約一九条二項によって保障された基本的人権である国民の「知る権利」を具体的に情報開示請求権として認めたものである。

したがって、情報開示請求権は、「知る権利」を保障する憲法及び国際人権規約の趣旨に従って解釈されなければならず、情報開示請求権を制限する本件条例九条各号の非開示条項を解釈するにあたっては、非開示となる情報が必要最小限になるように厳格に解釈しなければならない。

(二) 本件公文書の本件条例九条二号該当性について

(1) 本件条例九条二号の趣旨は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより、個人のプライバシーに関する情報であると推認できる場合も含めて、個人に関する一切の情報を非開示としたものとされている。

また、一般に、プライバシーの権利の侵害が法的救済の対象になるには、公開された内容が、①私生活上の事実又は事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、③一般の人々には未だ知られていない事柄であることの三要件が必要と解されている。

本号がプライバシーの保護を目的とし、「個人に関する情報」をプライバシーに当たるものと一応推認して非開示と定めたものである以上、「個人に関する情報」に該当するか否かは、終極的には、本件公文書記載の情報が右のような種類の情報に当たるか否かという観点から限定的に解釈されるべきである。

(2) ところで、本件公文書は、いずれも都知事という立場にある被告との公的交際の状況を記した文書であり、当該個人の私生活上の事実を記載したものとはいえないし、都知事たる被告との交際の事実が、一般人の感受性を基準にして当該個人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄に該当するともいえない。

また、本件公文書は、知事の交際の相手方に係る都の評価、位置づけを示すものであるが、それはあくまで当該個人と都との公的関係における評価、位置づけであり、私生活上の事実とはいえないし、また、そのような評価、位置づけが、一般人の感受性を基準にして当該個人の立場に立った場合、必ずしも公開を欲しないであろうと認められる事柄に該当するものでもない。

したがって、本件公文書中別表一、二の「条例9条該当号」の「2号及び8号該当」の欄に記載されたものは、いずれも「個人に関する情報」を記載したものではなく、本件条例九条二号には該当しない。

(3) 仮に右が理由がないとしても、本件公文書中の個人名の記載がなく、職名や肩書のみが記載されているものについては、「個人に関する情報」に当たらない。職名や肩書のみが記載されている場合、都知事は、都と交際のある団体等の代表者・役職者等一定の地位に対して交際費を支出しているのであって、その役職にいる個人と交際しているのではない。他の情報と組み合わせて、当該役職等にある個人名が知りうるとしても、交際費の支出の趣旨は団体等との交際のためにあるのであるから、「個人に関する情報」には該当しないと解すべきである。

(4) また、本件公文書のなかには、相手方が公務員であるものが多数存在すると考えられるが、前記のとおり、本件条例九条二号の非開示条項は個人のプライバシーを保護するための規定であるから、形式上は個人についての情報であっても私的事項ではなく公的事項であることが明らかな情報は、「個人に関する情報」には該当しないと解すべきである。したがって、本件公文書中相手方が公務員であるものについては、その支出関係が公的事項でないことが明らかでない以上、本件条例九条二号には該当しないというべきである。

(三) 本件公文書の本件条例九条八号該当性について

(1) 被告は、本件公文書を本件条例九条八号にいう「渉外」に関する情報であると主張するが、「渉外」とは、主として外国との折衝、協議、調整にかかる事務を意味するものであって、それに国内諸団体との折衝等も含まれるかは本来的に疑問である。そればかりでなく、仮に「渉外」事務のなかに国内諸団体との折衝等が含まれるとしても、右折衝等にあたって行われることのある懇談、接遇に関する交際事務は、「渉外」事務の内容それ自体ではなく、単にその手段としてこれに付随して行われることがありうる事務にすぎず、このように単なる手段にすぎない事務の日時、相手方、支出項目、支出金額が、「渉外」事務に関する情報といえないことは明らかである。

(2) 次に、本号についても、前記(一)の情報開示請求権の意義と非開示事項の解釈について述べたとおり、非開示となる情報が必要最小限になるよう厳格に解釈すべきである。

そして、本号の解釈にあたっては、埼玉県の同種条例における同様の非開示条項の「その他公開することにより行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかである情報」の解釈につき、ある情報が右五号に該当するというためには、それを公開することが、単に実施機関の主観において「行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生ずる」と判断されるだけでは足りず、そのような危険が具体的に存在することが客観的に明白であることを要するといわなければならないと判示した裁判例や、大阪府の同種条例における同様の非開示条項の解釈につき、主として府の行政上の利益の保護を図って制定されたと考えられる規定の解釈に当たっては、そこで保護されるべき利益が実質的に保護に値する正当なものであるか否か、また、その利益侵害の程度が、単に行政機関の主観においてそのおそれがあると判断されているにすぎないのか、あるいは、そのような危険が具体的に存在することが客観的に明白であるといえるのか、さらに右のようなおそれがあるにしても、逆にそれを非公開とすることによる弊害はないか、また、公開することによる有用性や公益性はないか等を総合的に検討することが必要であることはいうまでもないと判示した裁判例を十分参酌すべきである。

(3) 以上のような観点に立つときは、被告の主張は、まさに単に主観的判断において、本件公文書を開示することにより「関係当事者間の信頼関係が損なわれ」、あるいは「行政の公正又は円滑な実施に著しい支障が生ずる」と主張しているものにすぎず、客観性、具体性を全く欠いた主張である。したがって、本件公文書はいずれも本件条例九条八号にも該当しないというべきである。

(被告の主張)

(一) 情報開示請求権の意義及び非開示条項の解釈について

原告の被告に対する情報開示請求権は、憲法の規定に基づいて直接発生する性質のものではなく、本件条例の規定によってはじめて具体的な権利として認められるものである。そして、本件条例は三条で、この条例の解釈及び運用につき規定している。

したがって、公文書の開示請求が認められるか否かは、法文解釈の一般原則と右三条の趣旨に従って、開示・非開示の要件を定めた条例の各条項の文言を、合理的に解釈・運用することによって判断されるべきであり、かつ、それで十分というべきである。

(二) 本件公文書の本件条例九条二項該当性について

(1) 本号は、「個人に関する情報」とは、「プライバシーの権利」を侵害する種類の情報であるとか、或いは私生活上のものであるとかということに限定して解釈することを要求しているものではない。

たしかに、本件条例三条及び九条二号の趣旨が、個人のプライバシーを最大限に保護することを目指したものであることは明らかであるが、一般的に、「個人のプライバシー」といっても、その概念が必ずしも一義的に明確であるとはいいがたい。そこで、本件条例は、個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより、個人のプライバシーに関する情報であると推認できる場合も含めて、個人に関する一切の情報は、非開示を原則とすることとしたものである。そして、このように定めることにより、個人のプライバシーの保護も全うされることになるのである。したがって、本件条例九条二号の規定は、「個人に関する情報」を原則的に全て開示請求の対象から除外したものであり、被告がこのように解釈・運用することには、合理的な理由がある。

(2) 交際の相手方について職名のみが記載されている場合であっても、知事が交際の相手方としているのは、団体の代表者あるいは役員等の地位というものではなく、あくまで、その役職に就いている特定の個人であることは、ことがらの性質上当然のことである。

そして、役職名のみの記載であっても、他の情報と組み合わせることにより、特定の個人を容易に識別することが可能であるから、かかる方法で記載されたものも、保護されるべき個人に関する一切の情報に含まれるものである。

したがって、本件公文書中に記録された情報のうち、知事の交際の相手方が個人である場合で、相手方の職名のみが記載されているものについても、特定の個人が識別され、又は識別されうる情報である。

(3) また、相手方が公務員であっても、そのプライバシーは保護されるべきであり、本件条例九条二号の法文中に公務員を適用除外とする旨の文言の存在しない以上、法文解釈の一般原則に照らしても、また本件条例三条の趣旨からみても、本件条例九条二号の解釈上、公務員を別異に扱うことはできない。

(4) したがって、本件公文書中別表一、二の「条例9条該当号」の「2号及び8号」の欄に記載したものを、本件条例九条二号にも該当するとした非開示決定に何ら違法な点は存しない。

(三) 本件公文書の本件条例九条八号該当性について

(1) 被告が本件公文書を開示することにより、相手方となった者はもちろん、相手方とならなかった者にとっても、知事の評価とその程度等が明らかとなり、それらの者に不快、不信、誤解等の念を抱かせることになる。このことにより、交際の相手方となった者とならなかった者との間の信頼関係ないし知事とその交際の相手方とならなかった者との間の信頼関係が損なわれることとなることは、容易に推認できるところであり、さらに、交際費の執行を通して都政の適正かつ円滑な運営を図るという渉外事業の目的が損なわれるおそれがあることも推認するに難くない。

また、支出項目と措置した金額が開示された場合、その項目の最高額・最低額・平均額が明らかになり、個々の交際の相手方となった者に対して措置した金額により、知事の裁量・重要度の評価について誤解ないし不信、不快等の念を抱かしめることとなり、知事とその交際の相手方となった者との信頼関係を損なうこととなるとともに、交際費の執行を通して都政の円滑な運営を図るという渉外事業の目的を損ない、将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障を生じさせるおそれがある。

(2) 知事の交際の相手方となった者あるいは交際の相手方とならなかった者が、本件公文書の開示により、右に述べたような不快、不信、誤解等の念をどの程度抱くか、あるいは、右公文書の開示により、交際費の執行をとおして都政の円滑な運営を図るという渉外事業の目的をどの程度損なうこととなるか、又は将来同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行にどの程度の支障を生じさせることとなるかは、個々具体的な場合により異なるであろう。しかし、その結果を、事前に予測することは不可能であり、また、開示を求められた知事が、個々具体的なケースごとに右のようなおそれが認められることを具体的に立証することも、また不可能と言わざるをえないものである。

したがって、仮に、知事は、個々具体的なケースごとに右のおそれを立証できないときには、本件公文書を開示しなければならないものとすると、結局本件公文書と同様の文書は、以後全て公開しなければならないという、不当な結果を生じることとなる。そして、その場合には、知事は、この種の文書を、将来開示することがありうることを前提としたうえで、相手方等に不快、不信、誤解等の念を生じることを防止しようとすることとなるが、そうすると、以後の交際費の執行に当たって、知事の裁量が著しく硬直化し、萎縮することとなるのは、みやすい道理である。交際費は、本来、知事が自由な裁量に基づいて必要に応じ適宜に措置することにより、はじめてその意義が十分に発揮されるものである。しかし、右のような結果は、交際費の意義を没却するものであり、結局、交際費の執行をとおして都政の円滑な執行を図るという目的に支障を生じさせることにならざるを得ないのである。

以上のとおり、本号の非開示条項に該当するといえるためには、個々の案件ごとに、開示することによって右のようなおそれが生じることが具体的に明らかであることが必要であるとするのは妥当でなく、実施機関において、そのようなおそれが生じると判断したことに、一応の合理性があると認められることをもって足りると解すべきである。

(3) したがって、本件公文書中別表一、二の「条例9条該当号」欄のものについて、本件条例九条八号に該当するとしてした非開示決定に何ら違法な点は存しない。

3  本件公文書の一部開示が認められるか。

(原告の主張)

(一) 本件公文書のうち「交際費の支出について」と題する書面のうち一般用については、別紙二の「使途」欄を除いた部分、供花・香典用については別紙三の「物故者」欄及び「葬儀法要、執行の日時場所」欄を除いた部分、別紙一の現金出納簿については摘要欄の氏名、肩書、職名の記載を除いた部分は、右部分を除けば個人を識別することはできないのであるから、開示すべきである。

(二) 右の「使途」欄、「物故者」欄や「摘要」欄の氏名等の部分は、それ以外の開示する部分と容易に分離することができるし、しかも原告にとっては右開示部分により、なお知事の交際費が一定の合理的基準をもって支出されているかどうかをチェックできるのであり、当該分離によっても開示の請求の趣旨はその限りで満たされることとなる。

(被告の主張)

原告主張のような一部開示は、次のとおり認められない。

(一) 一般用書面について

交際費の使途、とりわけ知事が誰を相手方として支出したのかを調査するというのが、原告の本件開示請求の本来の趣旨と推認されるところ、使途欄を開示の対象から除いて一部開示をした場合、右請求の趣旨を損なうことは明らかであるから、かかる場合には一部開示をすべき場合に該当しないものである。

(二) 供花・香典用書面について

仮に「物故者」欄及び「葬儀法要、執行の日時場所」欄を除いて開示するとした場合でも、開示請求をする者が、請求の際に、対象文書について、期間を細かく区切って逐次請求する方法をとれば、弔慰目的で交際費を支出した日を容易に割り出すことができることになる。その結果、新聞等による他の情報と組み合わせることにより、特定の個人を識別することが可能となる。

(三) 現金出納簿について

仮に、相手方の氏名、肩書、役職名を抹消しても、日付・金額のみならず、支出項目まで開示した場合には、請求人が他の手段で知りうる情報と組み合わせることにより、知事の交際の相手方を知ることができることは、容易に推測できる。

また摘要欄の氏名、肩書、役職名の記載は、摘要欄における他の記載(支出項目等)とあわせて一文で一体として表示されていて、この両者を分離することは困難である。

第三争点に対する判断

一争点1について

1  特定の団体が法人に非ざる社団にして代表者の定めのあるものとしてその名において訴えることのできるものに該当するとされるためには、それが、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要すると解すべきである。

2  これを原告について見ると、原告の組織としての内容は以下のようなものと認められる(認定した証拠は末尾に掲記した。)。

(一) 原告は、昭和五八年八月七日一六の団体と一一一名の個人の参加によって設立された団体であり、以下の事項を定めた書面による会則を有している(<書証番号略>)。

(1) 税の公平な負担と公平な配分を監視することを目的とし、この目的に賛同する個人、法人、団体を会員とする。

(2) 役員として、代表世話人、世話人、会計、監査、顧問、相談役を置く。

(3) 総会(年一回)と役員会(適宜)を開催する。

(4) 役員は総会で選任し、任期を二年とする。

(5) 経費は会費・寄付金・その他の収入を充てる。

(6) 運営の細目は役員会で決定する。

(二) 原告は、昭和五八年八月七日に設立総会を開催した後、毎年総会を開催して、会計報告、役員改選、活動方針の採択等を行っているほか、「税金を監視する会ニュース」を発行し、地方公共団体の職員給与の調査、地方公共団体の税務申告漏れの事実の指摘、会員が行う住民監査請求及び住民訴訟の経過報告等を行い、各種の勉強会あるいは研究会を開催するなど、広く税金の公平な負担と公平な配分を監視する活動を行っている(<書証番号略>)。

(三) 総会においては多数決の原則が採用されているが、特に議事が紛糾したことはなく、実際には全員一致で議事が決定されている(<書証番号略>)。

3  右の事実によれば、原告は、まず、多数の個人及び団体を構成員として設立され、総会を議決機関とし、代表機関として代表世話人を置いているという点で、団体としての組織を備えているものといえる。また、右の総会は実際は全員一致であるが、多数決原則が否定されているわけではない。更に、昭和五八年に設立されて以来、会として実質的な活動を継続しており、本件開示請求や訴訟のためだけに急遽構成されたものではなく、構成員の変更や役員の改選にもかかわらず団体そのものが存続しているものと推認できる。その他、対内的にも対外的にも団体としての主要な点が確定していると見ることができる。

したがって、原告は法人に非ざる社団としての要件を満たしていると認められ、また、代表者の定めがあることも前記のとおりであるから、原告は民事訴訟法四六条により、その名において訴えることができるものというべきである。

二争点2について

1  原告が本件訴えにおいて主張する権利について

本件条例が、東京都の区域内に住所を有する者その他一定の者に公文書の開示を請求できる権利があるものとして、そのための手続きを設け、開示の請求に対する決定に対して、行政不服審査法による不服申立てができることを前提とした規定を置いたことによれば、右の一定の者は、本件条例によって、その条例が規定する条件の下における限りにおいて、実施機関に対し、条例所定の公文書の開示を請求することのできる権利を付与され、その拒否に対しては、取消訴訟をもって争うことができるものとされたものと解される。

2  本件公文書の本件条例九条二号該当性について

前記(第二、三5)事実によれば、本件公文書のうち、別表一、二の「条例9条該当号」の「2号及び8号」の欄に記載したものは、当該文書の記載自体から、被告の交際の相手方としての特定の個人が識別され、当該個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報は、この中には含まれていない。)が明らかになる文書であるから、本件条例九条二号に該当し、被告は、これを開示しないことができるものと認められる(そのうちの更に一部の情報についての開示の可否については、後に検討する。)。

原告が、特定の個人が識別されうる個人に関する情報であっても、条例九条二号にいう「個人に関する情報」ではないと解すべきであるとして主張するところは、右条例の規定が文言として意味するところを越えた独自の議論であって採用できない。また、「特定の個人が識別され得るもの」とは、当該情報によって特定の個人が直接に識別できるもののほか、他の情報と組み合わせれば特定の個人を識別することのできる情報をも含むと解すべきであって、肩書・職名のみが記載されている場合も他の資料と相まって個人が特定できることは明らかであるから、これをも「特定の個人が識別できるもの」に含まれるものというべきである。なお、原告は、相手方が公務員の場合本号に該当しないと解すべきである旨主張するが、公務員であっても個人であることには変わりはなく、本号は公務員を除外していない以上、本号の解釈において公務員を別異に取り扱うことはできない。

3  本件公文書の本件条例九条八号該当性について

(一) 被告は、知事の交際費の支出に関する事務は、本件条例九条八号前段にいう「渉外」に関する事務であると主張するが、「渉外」とは、本来、国内外(外国には限定されない。)の諸団体との折衝、協議、調整にかかる事務を意味するものと解されるところ、交際費の支出に関する事務は、「渉外」事務の内容それ自体ではなく、右折衝等にあたって、懇談、接遇等の形で、その手段としてこれに付随して行われることがありうる事務にすぎず、「渉外」事務そのものとはいえない。しかしながら、本号は、特定の事務のほかに「その他実施機関が行う事務事業」を挙げており、これは、本号に掲げられた特定の事務に準ずるものをいうと解すべきところ、本件交際事務(慶祝、弔慰、餞別、見舞、会費、謝礼、接遇、雑)は、いずれも、本号の「渉外」事務に類似し、これに準ずる事務ということができる。したがって、本件交際費の支出に関する事務は、本号前段の「その他実施機関が行う事務事業」に当たる。

(二) 被告は、本件公文書を開示することにより、相手方その他の関係者に不快、不信、誤解等の念を抱かせることになるので、右文書に記録された情報は、本件条例九条八号後段にいう、関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの又は当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ずるおそれがあるものに当たると主張する。

右被告の主張によれば、交際費に関する情報は、交際ということの特殊性から、一般的に本件条例九条八号後段に当たり、常に開示されないということになる。しかし、本件条例は、同号前段において交際を例示として挙げることさえしていないのであり、例示として挙げた事務であっても、直ちに非開示とすることを許容せず、非開示とするには更に同号後段の要件のあることを要求しているのであるから、右被告の主張は、このような条例の規定の建て方からしても、その規定するところに適合しないものというべきである。

実質的にみても、被告が交際費に関する情報を開示するのは、本件条例によって課せられた義務の履行としてするのであり、自らの発意でこれをするものではないのであるから、その支出を受けた相手方が、これを開示したこと自体について、被告に対し、不信の念を抱くとは考えられないのである。困惑や不快の念については、あるいは、自らが受けた知事の支出等を公開されることに関し、そのような感情を抱くこととなる者もあるかも知れないが、それが、どの程度のものであるかは、事案や、相手方によって、様々に異なるであろうと考えられるのであって、そのいずれの場合であっても、その公開によって、必ず当事者間の信頼関係が失われる事態になるとか、当該事務事業の若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ずるおそれが必ず生ずるとまで言うことのできないことは明らかである(証人五幣富士雄のこの点に関する証言も、一般的観念的に本件公文書が公開された場合に生ずる支障をいうもので、個別の場合に関する具体的な立証といえるものではない。)。現に原告は、議長や地方自治体の長等の交際費の支出に関する情報を、そのうち個人を識別し得るものだけを除くなどして公開した実例のある地方公共団体(蒲原町、那覇市、保谷市、西尾市、豊島区、日野市、町田市及び春日部市)に対し、その実例によって、関係当事者間に困惑・不快・不信の念を抱かせたため、その信頼関係を損なうこととなるとともに、交際費の執行を通じて行政の円滑な運営を図るという事業の目的を損ない、将来の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障を生じさせるおそれがあると判断されるような事例があったか等の質問を行ったところ、いずれの自治体からも、そのような事例はないとの回答があったことが認められるのであって(<書証番号略>)、この事実は、右の被告の主張に対する有力な反証となり得ているというべきである。

被告は、個々のケース毎に、支障の程度を立証することは不可能であるから、実施機関が、そのおそれがあると判断したことに一応の合理性があると認められることをもって足りると解すべきであると主張するが、本件条例には、前記のとおり、その解釈及び運用に当たり、公文書の開示を請求する都民の権利を十分に尊重しなければならないとの規定があるのであって、その規定の趣旨に鑑みれば、およそ、交際費の情報に関しては、その開示・非開示の決定を、あげて実施機関の裁量に委ねる結果となる被告の右主張を採用することは、本件条例の趣旨とするところに反するものというべきである。

被告は、右のような立場に立って、本件公文書が本件条例九条八号後段に該当することについて、具体的な立証をしなかった。しかし、以上に検討したとおり、右の点については、具体的な主張・立証がない限り、これに該当すると認めることはできないという他はない。

(三) したがって、本件公文書のうち、本件条例九条八号のみに該当するとされたものについては、右に該当することを認めるに足りる証拠が存しないといわざるを得ないから、被告はこれを開示しなければならないものというべきである。

三争点3について

1  本件条例一〇条は、請求された情報に非開示条項に該当する部分とそうでない部分が混在している場合には、全部を非開示とせず、可能な限り非開示部分を除いて開示することとして、開示を原則とし非開示を例外とする本件条例の趣旨(三条)をできるだけ活かそうとするものである。

2  したがって、本件条例九条二号に該当し、非開示とすることができる公文書であっても、特定の個人を識別し得る情報を削除することにより、特定の個人が識別され得ることなく、かつ、請求の趣旨が損なわれない程度に情報の一部を開示することができるときは、当該部分を削除して開示すべきであると解するのが相当である。

3  そこで、まず、本件公文書のそれぞれについて、どの部分を削除すれば特定の個人が識別され得なくなるかを検討する。

(一)  現金出納簿及び「交際費の支出について」と題する書面(一般用)については、前示(第二、三4)のとおり、いずれも、その「摘要」欄又は「使途」欄に、支出の相手方の氏名、役職名又は肩書が記載されており、それ以外に特定の個人を識別し得る情報があるとの主張・立証はないから、「摘要」欄又は「使途」欄のうちの相手方の氏名、役職名又は肩書の部分を削除すれば足りるものと認められる。

(二)  「交際費の支出について」と題する書面(供花・香典用)については、「物故者」欄の記載及び「葬儀法要、執行の日時場所」欄中場所の記載を削除することによって、特定の個人を識別し得なくなるものと認められる。

(三)  本件公文書中の前記以外の部分に新聞等で知り得た他の情報を総合することで特定の個人を識別しうる可能性については、全く絶無ではないが、例えば、都内だけをとってみても、一日の葬儀法要執行は多数にのぼるものであって、そのようなことがあるとしても、問題とする程度には至らないものと考えられる。少なくとも、本件について、右のような方法で特定の個人を識別しうることについての証明はない(証人五幣富士雄は、そのような可能性があると証言するが、一般論に留まっており、それで証明ありとすることはできない。)というほかない。

4  そこで、次に、右の部分を削除して開示することが容易であり、かつ、開示請求の趣旨に反しないかどうか検討する。

(一) 前記の削除部分は、他の部分と同一ページ若しくは同一欄内にあるが、当該部分のみを除いて複写することによって、容易に開示する部分と分離することができると考えられる。

(二) また、公文書開示請求の趣旨との関連では、上記各部分を除いたものであっても、知事が交際費に支出する金額の大綱については知ることができるものと認められるうえ、原告自ら、全部開示が認められない場合には、右各部分を削除した部分について開示するよう求めており、被告がその開示の必要性について云々しうる立場にあるものではないから、右各部分を削除した一部開示でも、原告の公文書開示請求の趣旨には反しないというべきである。なお、被告は、原告以外の請求者から知事交際費の現金出納簿の日付及び金額部分のみの開示請求があったのに対し、開示を行っている(<書証番号略>)。

第四結論

よって、原告の請求は主文掲記の限度で理由があるから、右限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとする。

(裁判長裁判官中込秀樹 裁判官榮春彦 裁判官喜多村勝德)

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